誰もいない。無人の台風中継。

仙台がいいわよ。アイドルのように誰か一人、住んでいる街を聞くだけで短絡的にそんなことを言うノータリンだった。妄想が嵩じれば、スーパーマーケットで買い物をしている主婦をストーキングしている間に、買い物の中身を写し取って盗み出せると信じ切って忙しなくストーキングしていた。びっしりストーキングしてその主婦を潰して最後にはなんの馬力か分からないような馬力で殺してしまう他に一生の間にしたいことはなあにもないのだと言って、変に潮を吹いていた。塩を吹いた勢いがないと何にも喋れないと信じ切っていた。写し取った絵には鯨が写っていて、女が潮を吹きながら昼日中に街を歩いていることについて、何も気にしたこともないようだった。勢いづいて吹く潮の異様さにああ良かったー!と言いわけがないのに肯定するに決まっていると短すぎるスカートから潮を吹きながら肯定の意を述べた。仙台に住んでいるらしいという街の話一つで何年でも仙台の街をストーカーになって歩く妄想に取り憑かれていた。妄想で買い物できるたよと真面目にホラを吹いていた。だが、ストーキングの妄想で追跡できるものは仙台にはなく、びっしり仙台をストーキングしているつもりで気づいた時には台風真っ只中の仙台の妄想は無人の廃墟っなり、カッパを着た台風中継の女子アナが唯一の人間になっていた。仙台にオメオメストーキングされ一生を台無しにされてしまう間抜けはいなかったという話だ。それにしても。数年間の集中の成果が、無人の台風中継だけだなんて。なんのために生きているんだか。寒々しい話である。

40代主婦 プログラミング